キックボードと歩行者が交通事故を起こした場合の過失割合について

昨今急速に普及が進むキックボード。電動キックボードの法改正により利用者が増え、それにともない関連する交通事故も多数発生しています。
そこで本記事では、キックボードと歩行者が交通事故を起こした場合の過失割合について解説します。
キックボードの道路交通法上の扱い
キックボードが道路交通法でどのように扱われているかを確認しましょう。
足こぎ式のキックボード
足こぎ式のキックボードは「遊具」とされます。よく利用される自転車が「軽車両」として通常の道路交通法の規定に従うのに対して、道路交通法第76条第4項第3号は「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。」と規定しており、足こぎ式のキックボードは「これらに類する行為」に該当すると見られています。
道路交通法第76条第4項第3号の規定に違反して交通のひんぱんな道路で足こぎ式のキックボードを利用するだけで、道路交通法第120条第1項第10号の規定によって5万円以下の刑事罰が科される可能性があるため、注意が必要です。
電動キックボードは特定小型原動機付自転車
電動キックボードは、その仕様によって原付・自動車・特定小型原付のいずれかとして扱われます。
電動キックボードには様々なスペックのものがありますが、昨今の道路交通法の改正で次の要件を満たすものについては「特例特定小型原動機付自転車」という取り扱いになります(道路交通法第17条の2)。
- 長さ:190センチメートル以下
- 幅:60センチメートル以下
- 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること。
- 時速20キロメートルを超えて加速することができない構造であること。
- 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと。
- オートマチック・トランスミッション(AT)であること。
- 最高速度表示灯(灯火が緑色で、点灯又は点滅するもの)が備えられていること。
引用:電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!|政府広報オンライン
「特例特定小型原動機付自転車」に該当するものについては運転免許なしに乗ることができ、昨今町中でよく見るレンタルの電動キックボードはこれにあたります。
法改正前に購入したものの中には、これらの要件を満たさないものもあり、その場合は大きさや構造によって原付または自動車として扱われます。以下では特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードであることを前提にお伝えします。
キックボードと歩行者が交通事故を起こした場合の過失割合
では、キックボードと歩行者の交通事故における過失割合について説明します。
足こぎ式のキックボードと歩行者の事故
足こぎ式のキックボードと歩行者の事故については、交通事故において過失割合を決める参考となる「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」にも事例として取り扱われていません。そのため、個別の案件ごとに確認する必要があります。
もっとも、道路交通法は歩行者が最優先であることにはかわりなく、かつ交通のひんぱんな道路においては使用が禁止されています。そのため歩行者が歩きスマホをしていたり、酔って歩いていたような事情がない限り、足こぎ式のキックボードに乗っている人に大きな過失割合が認められるでしょう。
電動キックボードと歩行者の交通事故の場合
電動キックボードと歩行者の交通事故の場合は、「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」における原付きと歩行者との間の交通事故に近いものと考えます。
交通事故のケースによって次のような過失割合の認定がされます。
- 歩道を走行している原付と歩行者の事故 原付10:歩行者0
- 歩行者の歩行が許されていない車道の真ん中を歩いていた場合 原付7:歩行者3
- 歩道と車道が分かれていない道路で右端を歩行者が歩いていた場合 原付10:歩行者0
- 信号のない横断歩道を横断中の歩行者と原付の事故 原付10:歩行者0
- 赤信号を横断中の歩行者と青信号の原付の事故 原付3:歩行者7
これらは一例に過ぎず、夜間である、歩行者が急に飛び出した、電動キックボードがスピード違反をしていた、などの事情によって修正されるため、過失割合については弁護士に相談することをおすすめします。
保険会社は自社に有利な主張しかしない
併せて確認しておいてほしいのは、保険会社は自社に有利な主張しかしないことです。
保険会社は損害賠償額を減らすために、様々な主張を行います。過失割合はその中の一つで、保険会社は自社に有利な主張しかしません。そのため、過失割合はきちんと精査して反論する必要があります。
まとめ
本記事では、キックボードと歩行者が交通事故を起こした場合の過失割合について解説しました。
急速に普及しているキックボードですが、免許証が不要でも乗れるようになったことから事故も急増しています。交通事故で問題になるのが過失割合で、電動キックボードについては原付に準じて考えることが多いです。
なお、損害賠償で争いになるのは過失割合だけでなく、慰謝料の基準(弁護士基準か保険会社基準か)や後遺障害等級認定など、さまざまな要素があるため、まとめて弁護士に相談することをおすすめします。