交通事故の修理代を過剰請求してバレたらどうなる?

交通事故の被害に遭った場合、車両の修理代を相手に請求できます。この際、もともと壊れていた箇所も合わせて修理し、その費用を請求することがあります。では、交通事故の修理代を過剰請求し、それが発覚するとどうなるのでしょうか?
本記事では、交通事故の修理代を過剰請求し、それが相手方に発覚した場合の影響について解説します。
交通事故の加害者が負う修理費用の範囲
前提として、交通事故の加害者が負う修理費用の範囲を確認しましょう。
交通事故の被害者は加害者に対して示談金の支払いを請求します。この示談金は法的には民法第709条以下に規定されている、損害賠償請求に基づきます。そのため、被害者が加害者に請求できるのは、交通事故で発生した損害のみに限られます。
したがって、修理費用として請求できるのは、交通事故による損害に限られます。
交通事故の修理代を過剰請求するパターン
交通事故の修理代を過剰請求する主なケースは、次のとおりです。
- 交通事故に関係のない修理をして請求する
- 相場よりも高い修理費用を請求する
交通事故に関係のない修理をして請求する
交通事故に関係のない修理をして請求するのが一つのパターンです。
たとえば、衝突でドアを破損しただけであるにもかかわらず、事故以前から壊れていたエアコンもついでに修理をして、両方の金額を請求することがあります。壊れていないものを新しいものに替えて請求することもあります。
相場よりも高い修理費用を請求する
もう一つのケースは、相場よりも高い修理費用を請求することです。
たとえば、本当は10万円で済む修理費用を、30万円として請求します。修理をした自動車工場と結託して高い請求書を作成してもらい、これによって相手に請求します。
交通事故の修理代を過剰請求し、バレた場合どうなるか
交通事故の修理代を過剰請求し、それが発覚するとどうなるのでしょうか。
過剰請求分の返還を請求される
過剰請求分の返還を請求されます。
上述したように、交通事故において相手に請求できるのは、交通事故で発生した損害のみです。交通事故で必要となった修理代であるとして相手に請求した過剰請求分については、法律上は受け取る権限がないものであり、民法第703条以下の不当利得返還請求権の規定に基づいて返還請求されることになります。
詐欺罪に問われる可能性
修理代の過剰請求は保険金詐欺として詐欺罪に問われる可能性があります。
刑法第246条では、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」と定められています。交通事故で損壊したわけではないものについて請求することは、これにあたるため詐欺罪に問われる可能性があります。なお、詐欺罪は未遂であっても処罰されるので(刑法第250条)、相手が過剰請求であることに気づいてお金を払わなくても詐欺未遂罪として刑事事件となる可能性があります。
交通事故の過剰請求はバレるのか
そもそも交通事故の修理代の過剰請求は発覚するのでしょうか。
交通事故の内容と修理内容が異なると、調査される可能性が高い
交通事故の内容と修理内容が一致しない場合、調査される可能性が高く、発覚する恐れがあります。
相手の保険会社は、提出された修理費用の明細書の内容を確認します。交通事故で損傷する可能性のない箇所や、当該交通事故で損壊したのが疑われる内容であれば当然ですが調査を行います。そのため、交通事故に関係のない修理費用の請求をすると発覚してしまいます。
保険会社は一般的な修理費用の相場を把握している
保険会社は一般的な修理費用の相場と見比べて請求内容を精査し、過剰請求を見破ることができます。
保険会社は日々交通事故の交渉を行っており、一般的な修理費や工賃の相場を把握しています。そのため合理的な理由が無く高い修理費用を請求している場合には、過剰請求であると見破ることができ、発覚する可能性があります。
保険会社から適正な示談金を得るためには、弁護士に相談
保険会社との交渉で適正な示談金を得るためには、弁護士に相談しましょう。
保険会社との示談金の交渉にあたって、保険会社は自社に有利な主張をするために、損害賠償のあらゆる内訳において争ってきます。
よく言われるのが慰謝料で、保険会社基準という独自の基準で低い金額で見積もって提示してくるので、裁判基準で計算し直すだけでも、示談金の金額が大きく変わる可能性があります。
また、過失割合では、認定されない事情から被害者の過失を主張したり、独自の過失割合について主張することもあります。
これらすべての項目についてきちんと精査することで支払われる額は大きく変わるので、過剰請求で多くの金額を請求するよりも、弁護士に相談して増額できないかを検討するようにしましょう。
まとめ
本記事では、交通事故の修理代を過剰請求して発覚したらどうなるのかについて解説しました。交通事故の被害以外の修理費用については請求する権利がないものであり、返還しなければならなくなるばかりか、詐欺罪として罪に問われる可能性もあります。
適正な額の保険金を得るためには、きちんと保険会社の請求内容を精査すべきです。まずは弁護士に相談することをおすすめします。