自動車と歩行者による交通事故の特徴や過失割合について
自動車と歩行者による交通事故は、生身の歩行者が大きなケガを負う可能性が高く、死亡事故につながるケースも少なくありません。令和5年に発生した交通事故の死者数は2678名で、状態別では歩行者が973名で最多でした。
過失割合についても、自動車と歩行者との交通事故では、自動車の過失が大きく認定される可能性が高いでしょう。大きな賠償責任を負うことになる歩行者との事故には、より注意しなければなりません。
この記事では、自動車と歩行者による交通事故に遭ってしまった際に知っておくべき「自動車と歩行者による交通事故の特徴」や「過失割合の決まり方」などを紹介しています。
自動車と歩行者による交通事故の特徴
歩行者の過失は低く認定される
自動車と歩行者の事故では、歩行者の方が大きなダメージを受けやすいです。そのため、基本的には、自動車よりも歩行者の過失は低く認定されます。歩行者が、児童や高齢者などの「交通弱者」である場合には、自動車側により大きな注意義務が課されるため、歩行者側の過失はより低くなります。
自動車を運転する側は、歩行者や自転車など、大きな被害につながりやすい相手との事故には、より注意しなければなりません。
たとえば、歩行者が横断歩道を歩行中であったときには、原則として歩行者の過失は「なし」と認定されます。さらに、歩行者が横断歩道のない場所を横断したときでも、基本の過失割合は、「歩行者20:自動車80」です。
自動車同士の事故では、「100:0」の過失割合になるケースはほとんどありませんが、歩行者が被害者のときには「100:0」の過失割合で自動車側が全責任を負うケースも多くなっています。
死亡事故につながる危険性が高い
自動車と生身の歩行者の事故では、歩行者が大ケガを負ったり、死亡したりする危険性が高くなっています。
令和5年に発生した交通事故の死者数は2678名でした。そのうち、歩行中の人は973名、自動車乗車中の人は837名で、歩行中の人が最も多い数値となっています。
参照:令和5年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について|政府統計の総合窓口
歩行者に重い後遺障害が残ってしまった場合や死亡してしまった場合には、自賠責保険では対応しきれない金額の賠償金が発生します。自賠責保険は、あくまで最低限の賠償をするための保険です。自動車を運転する人は、必ず任意保険に加入してください。
過失割合の決まり方
自動車と歩行者の事故の過失割合は、基本過失割合と修正要素によって算定されます。
基本過失割合は、過去の裁判例の動向や傾向を分析して、事故の状況によって基本となる過失割合を示したものとなります。修正要素は、属性や過失などに応じて基本過失割合から加算・減算する要素です。
基本過失割合
横断歩道のある十字交差点
横断歩道のある十字交差点で出合い頭の接触事故を起こした場合、一時停止規制の有無や信号の色によって基本過失割合が判断されます。
信号のない横断歩道を歩行している時
信号のない横断歩道を歩行者が歩行している場合、歩行者は絶対的に近い保護を受けます。車両は歩行者を優先して通す必要があるため車両側が大きな過失を負います。
修正要素
上記で紹介した事故状況別の基本過失割合に修正する形で過失割合を算定します。
- 児童(6歳以上13歳未満の子ども)
- 高齢者(65歳以上)
- 高速度進入
- 著しい高速度進入
- 著しい過失
- 重過失
- 大型車
著しい過失には次のようなものがあります。
- 脇見運転
- 夜間無灯火
- 前方不注意
- 音楽を聴きながらの運転
- 酒気帯び運転
- 携帯電話の使用など
- 歩行者の集団横断
- 横断禁止の規制
- 歩道上の事故
重過失には次のようなものがあります。
- 酒酔い運転
- ブレーキの整備不良など
さいごに
自動車と歩行者の交通事故では歩行者が絶対的に保護されます。特に信号のない道路では、自動車側が大きな過失を負います。
特に死亡事故や大きな障害が残ってしまった場合には、莫大な損害賠償を求められることもあるので、自動車を運転するなら自動車保険には必ず入っておきましょう。自動車保険の多くには弁護士費用特約がオプションとして用意されているので、加入しておくと事故の際には安心して弁護士へ相談することができます。
交通事故被害に遭った場合には、交通事故に強い弁護士へ依頼することをおすすめします。