交通事故がきっかけでうつ病(精神疾患)になった場合の損害賠償について

交通事故の被害に遭ったことが原因で、うつ病などの精神疾患を発症することがあります。ケガをしていないため、損害賠償請求は難しいのでは?と考える方も多いですが、ケガとの因果関係が認められれば「損害」として損害賠償請求が可能です。
そこで本記事では、交通事故がきっかけでうつ病などの精神疾患になった場合の損害賠償請求について解説します。
うつ病などの精神疾患でも損害賠償請求ができるのか
うつ病などの精神疾患でも損害賠償請求ができるのでしょうか。
交通事故の被害者が加害者に対してする損害賠償請求は、民法第709条以下に定められている不法行為損害賠償請求によるものです。そのため、生じた損害との間に因果関係が認められる損害については賠償する義務があり、うつ病などの精神疾患も、因果関係が認められれば損害賠償請求が可能です。
交通事故による精神疾患としては、うつ病のほかにPTSD(心的外傷後ストレス障害)が代表的です。
うつ病
うつ病とは、「精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態」のことをいいます。
(引用:うつ病|こころの情報サイト URL:https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL)
交通事故は精神的・身体的ストレスの原因となるだけでなく、事故後の環境の変化によってもうつ病を発症することがあります。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSDとは、「死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態」をいいます。
(引用:PTSD|こころの情報サイト URL:https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=iGkwv4PNzgWhQ9xI)
交通事故の時の記憶が蘇ってしまうことがあり、日常生活に支障をきたすことがあり、このような場合、PTSDと診断されることがあります。
うつ病などの精神疾患になった場合の損害賠償
うつ病などの精神疾患による損害賠償の対象として、以下のものが挙げられます。
治療費・入院費など
治療費や入院費は、損害賠償として請求できます。
うつ病などの精神疾患になってしまった場合、定期的に通院・投薬などが必要となります。ケースによっては入院して治療することもあります。これらの費用については損害として加害者に請求できます。
入通院慰謝料
入院や通院することになった精神的苦痛に対する慰謝料が入通院慰謝料です。
入院や通院を強いられること自体に精神的苦痛が発生します。これに対する補償として、慰謝料が支払われます。ケガによるもののみではなくうつ病などの精神疾患による入院・通院も含まれます。
休業損害
仕事を休まなければならなくなった場合には休業損害の支払いが必要です。
交通事故によって治療が必要になったことが原因で仕事を休んだ場合、本来得られるはずであった給与を得ることができなくなります。そのため、休業損害も被害者が損害賠償として請求できます。うつ病などの精神疾患となった場合も同様です。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の支払いが必要な場合があります。
うつ病などの精神疾患は、治療に非常に長い期間が必要であるほか、持続的な人格変化が残ってしまうことがあり、障害等級を認定する必要があるとされています。うつ病や精神疾患の障害等級は、厚生労働省が定める「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」に基づき、次の3段階で認定されます。
- 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」:第9級の7の2
- 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」:第12級の12
- 「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」:第14級の9
うつ病などの精神疾患の認定は非常に困難なため、弁護士に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。
後遺障害逸失利益
後遺障害によって、以前のように仕事ができなくなったために発生する将来の減収分のことを後遺障害逸失利益といいます。
後遺障害逸失利益を請求するためには、後遺障害等級認定が重要になります。
まとめ
本記事では交通事故がきっかけでうつ病(精神疾患)になった場合の損害賠償について解説しました。
交通事故でうつ病やPTSDなどの精神疾患になった場合には、損害として損害賠償請求が可能です。ただし、交通事故との因果関係の認定や後遺障害等級認定は、ケガの場合よりも立証が困難とされています。適正な後遺障害等級認定や損害賠償請求を実現するために、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。