加害者から示談を持ちかけられたらどうすればよい?
交通事故で加害者本人から示談を持ちかけられました。加害者は任意保険に加入していないのか、保険会社ではなく加害者本人が窓口となっています。加害者本人と示談する場合はどのような流れになるのでしょうか?保険会社と示談交渉する場合と比べて、注意すべき点はありますか?
交通事故の当事者同士で示談交渉を行うと、お互いに専門的な知識がないので適切な条件で示談を成立させるのが難しくなります。慣れない手続きで話が上手く進まなかったり、条件が決まっても示談金がスムーズに振り込まれなかったりする可能性もあるでしょう。
加害者本人と示談交渉を行う場合は、安易に交渉を進めず、弁護士に相談することをおすすめします。
加害者本人との示談交渉の流れ
交通事故の被害者となってしまった場合、ほとんどのケースでは加害者側の保険会社と示談交渉を進めていくことになります。しかし、加害者が任意保険に加入していない場合や保険を使いたくないと考えている場合などは、加害者本人と示談交渉をしなくてはなりません。
当事者同士で示談交渉を行うと、相場とかけ離れた金額で示談をしてしまったり、示談金が振り込まれなかったりなどのトラブルが起こる可能性が高いため、十分注意が必要です。
ここでは、加害者本人と示談交渉を行う際の流れとそれぞれの場面における注意点を解説します。
1.事故現場で加害者と連絡先を交換する
交通事故の現場で行うべきことは、警察への報告と加害者との連絡先の交換です。
交通事故の当事者は、事故の日時や場所を警察に報告する義務があります(道路交通法72条1項後段)。交通事故の現場で加害者から「警察には報告しないでほしい」と言われても、それに応じてはいけません。警察への報告を怠ると、道路交通法違反となるだけでなく、交通事故の存在を証明する手段がなくなるため、示談金を受け取れなくなる可能性もあります。
特に怪我をした場合には、人身事故扱いとして警察の実況見分が必要となります。
加害者との連絡先交換についても、必ず現場で行いましょう。連絡先が分からないと、示談交渉を進めるのが難しくなります。加害者から聞くべき情報は、次のとおりです。
- 氏名、住所
- 電話番号
- メールやLINEなど電話以外の連絡手段
これ以外にも、必要に応じて職場や加入している保険の情報についても確認しておくと良いでしょう。
2.示談金の相場を確認する
被害者と示談をする前に、必ず示談金の相場を確認してください。交通事故の示談金には、次のものが含まれます。
- 治療費、入院費用、通院費用
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
- 車両修理費 など
当事者同士で示談交渉すると、それぞれの損害の項目を計算することなく、根拠のない金額が提示されることもあります。しかし、示談金の相場がわからずに交渉を進めるのは難しく、仮に示談が成立したとしても相場から離れた金額になる可能性が高いでしょう。
双方が納得できる形で示談を成立させるためにも、示談金の相場を確認する作業は欠かせません。
3.示談交渉を行う
損害が確定した後に、加害者と示談交渉を行います。加害者本人との示談交渉の一般的な流れは以下の通りです。
- 治療費や車両修理費などを一時金として支払ってもらう
- 治療の終了により損害が確定する
- 示談金の相場をもとに示談交渉を行い示談金の額を決定する
- 受け取り済みの一時金を差し引いた額を受け取る
加害者との最終的な示談は、車両の修理や治療などがすべて終わってから行ってください。交通事故による損害は、車両の修理や治療などが終わらなければ確定しません。怪我の治療中に示談してしまうと、治療が長引いてしまったときの治療費や後遺症が残った場合の慰謝料や逸失利益などを請求できなくなってしまいます。
4.示談金を受け取る
示談が成立したら、示談書を作成して示談金を受け取ります。
当事者同士で示談する場合でも、示談書は必ず作成してください。示談書に記載すべき内容は、次のとおりです。
- 交通事故の発生日、事故の内容、場所
- 示談金の額、支払い方法
- 示談の内容(損害の項目、過失割合など)
- 後遺症が発生した場合の取り扱い
- 清算条項 など
加害者本人との示談交渉においては、示談を成立させたとしても指定の期日に示談金が支払われるとは限りません。示談金の支払いがないときには、民事訴訟や強制執行などの法的手続きが必要となってしまいます。
加害者本人と示談交渉する際の問題点
被害者が加害者本人と示談交渉する際には、次のような問題があります。
- 加害者本人とのやり取りにストレスを抱える
- 加害者が一時金を支払ってくれないときは治療費を自己負担することになる
- 損害の確定前に示談を成立させてしまう可能性がある
- 示談金の相場がわからずに不当に低い金額で示談してしまう可能性がある
- 加害者からの示談金が支払われない可能性がある
加害者側の保険会社と示談交渉をする際には、治療費を自己負担したり、損害の確定前に示談を成立させてしまったりする危険はありません。しかし、加害者本人と示談交渉する際には、お互いに専門的な知識がないために、通常では考えられないようなタイミング、内容で示談を成立させてしまう可能性があります。
加害者本人との示談を安易に進めるべきではありません。加害者本人と示談交渉する際のリスクを軽減するには、弁護士に加害者との示談交渉を依頼するのがおすすめです。
弁護士費用特約に加入している場合には、費用の負担なく弁護士に依頼できます。加害者本人との示談交渉でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
加害者から示談を直接持ち掛けられても安易に応じてはいけないことを紹介しました。加害者も被害者も共に法的な知識・経験に乏しく被害に遭った場合には、適切な賠償を受けることができなくなる可能性があります。
示談に安易に応じる前に、交通事故に強い弁護士にまずは相談することをおすすめします。特に大きな怪我や後遺障害を負ってしまった場合には、必ず弁護士に相談をしてください。