後遺障害等級第2級の主な症状と認定基準・慰謝料相場について

重篤な交通事故の被害に遭うと後遺症が残る場合があります。後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けたうえで、相手に対して後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求します。
本記事では、後遺障害等級第2級の主な症状、慰謝料相場などについて解説します。
後遺障害等級第2級
後遺障害等級第2級については、「自動車損害賠償保障法施行令 別表第1」「自動車損害賠償保障法施行令 別表第2」で次のように定められています。
自動車損害賠償保障法施行令 別表第1
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
自動車損害賠償保障法施行令 別表第2
- 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
- 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
- 両上肢を手関節以上で失つたもの
- 両下肢を足関節以上で失つたもの
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」に該当する場合には後遺障害等級第2級の認定がされます。
高次脳機能障害、外傷性脳損傷、脊髄損傷などが原因となるケースが多いです。
高次脳機能障害の場合、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要する場合として次のいずれかに該当すれば第2級に認定されます。
- 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する
- 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とする
- 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とする
外傷性脳損傷による身体機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの動作について随時介護を要する場合、次のいずれかに該当すれば第2級に認定されます。
- 高度の片麻痺が認められる
- 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する
脊髄損傷の場合、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するとして次のいずれかに該当する場合には第2級に認定されます。
- 中等度の四肢麻痺が認められる
- 軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する
- 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する
神経系統の機能又は精神の障害としては、他にも次のような等級に認定されることがあります。
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの:第1級
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの:第3級
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの:第5級
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの:第7級
- 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの:第9級
- 局部に頑固な神経症状を残すもの:第12級
- 局部に神経症状を残すもの:第14級
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」に該当する場合には後遺障害等級第2級の認定がされます。
胸腹部臓器とは、呼吸器・循環器・腹部臓器・泌尿器・生殖器などがこれに該当します。
第2級に該当する場合として次のものが挙げられます。
- 多数の臓器に障害を残し、それらが複合的に作用するため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要する
- 呼吸器の障害について以下の場合のいずれかである
- 動脈血酸素分圧が50Torr以下で呼吸機能の低下により随時介護が必要
- 動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下で動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr以下)になく、かつ、呼吸機能の低下により随時介護が必要。
- スパイロメトリーの結果%1秒量が35以下又は%肺活量が40以下であり、高度の呼吸困難(呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けない)が認められ、かつ、呼吸機能の低下により随時介護が必要
胸腹部臓器の機能障害については、他に次の等級が認定されることがあります。
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常時介護を要するもの:第1級
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの:第3級
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの:第5級
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの:第7級
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの:第9級
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの:第11級
- 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの:第13級
一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
交通事故で目を負傷し、「一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの」に該当する場合は、後遺障害等級第2級に認定されます。
失明とは、次の状態を指します。
- 眼球を摘出した状態
- 光の明暗が全く分からない状態
- 光の明暗が辛うじて分かる状態(暗室で眼前で照明の点滅がわかる状態)
視力は眼鏡やコンタクトレンズで矯正した後の視力で計測します。
目についての障害には後述の両眼の視力が0.02以下になった場合のほかに、次のような等級認定がされることがあります。
- 両眼が失明した:第1級
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下:第3級
- 両眼の視力が0.06以下:第4級
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下:第5級
- 両眼の視力が0.1以下:第6級
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下:第7級
- 一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下:第8級
- 両眼の視力が0.6以下:第9級
- 一眼の視力が0.06以下:第9級
- 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの:第9級
- 一眼の視力が0.1以下:第10級
- 正面を見た場合に複視の症状を残すもの:第10級
- 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの:第11級
- 両眼のまぶたに著しい運動障害を残す:第11級
- 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの:第11級
- 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残す:第12級
- 一眼のまぶたに著しい運動障害を残す:第12級
- 一眼の視力が0.6以下:第13級
- 正面以外を見た場合に複視の症状を残す:第13級
- 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残す:第13級
- 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残す:第13級
- 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残す:第14級
両眼の視力が0.02以下になったもの
交通事故で目を負傷し、「両眼の視力が0.02以下になったもの」に該当する場合には後遺障害等級第2級の認定がされます。
この場合も、視力は眼鏡やコンタクトレンズで矯正した後の視力で計測します。
両上肢を手関節以上で失ったもの
交通事故で腕を怪我して「両上肢を手関節以上で失ったもの」に該当する場合には後遺障害等級第2級の認定がされます。
「失ったもの」とは事故や手術で切断した場合をいいます。
上肢の怪我としては他に次のような場合があります。
- 一上肢をひじ関節以上で失った:第4級
- 一上肢を手関節以上で失つたもの:第5級
- 一上肢の用を全廃した:第5級
- 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃した:第6級
- 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す:第7級
- 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃した:第8級
- 一上肢に偽関節を残す:第8級
- 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残す:第10級
- 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残す:第12級
両下肢を足関節以上で失ったもの
交通事故で足を怪我して「両下肢を足関節以上で失ったもの」に該当する場合には後遺障害等級第2級の認定がされます。
同じく「失ったもの」とは事故や手術で切断した場合をいいます。
下肢の怪我として、他に次のようなケースが挙げられます。
- 両下肢をひざ関節以上で失った:第1級
- 一下肢をひざ関節以上で失ったもの:第4級
- 一下肢を足関節以上で失つたもの:第5級
- 一下肢の用を全廃した:第5級
- 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃した:第6級
- 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す:第7級
- 一下肢を5cm以上短縮した:第8級
- 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃した:第8級
- 一下肢に偽関節を残した:第8級
- 一下肢を3cm以上短縮した:第10級
- 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残す:第10級
- 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残す:第12級
- 一下肢を1cm以上短縮した:第13級
複数の後遺症によって第2級と認定される場合もある:併合
上記の症状がなくても、複数の軽い後遺症が重なって2級と認定される「併合」という仕組みがあります。
複数の後遺症がある場合、それぞれの後遺症が第2級より軽い場合でも、併合により等級認定されることがあります。
併合によって第2級になる場合として次のものが挙げられます。
- 第3級の症状と第9級~13級の症状 → 第3級が1つ上がり、第2級
- 第4級の症状と第6級~8級の症状→第4級が2つ上がり、第2級
- 第5級の症状が2つ→第5級が3つ上がり、第2級
具体的に該当しない場合でも第2級と認定される場合もある:相当
具体的に第2級の等級に規定されている場合ではなくても、症状から第2級に認定する「相当」という仕組みがあります。
後遺障害等級認定では、等級表に明記されていなくても、第2級に相当する症状があれば、第2級として認定されることがあります。これが「相当」です。
後遺障害等級第2級の後遺障害慰謝料
後遺障害等級第2級の後遺障害慰謝料は次の通りです。
基準 | 後遺障害慰謝料の額 |
自賠責基準 | 998万円(※2020年3月31日までは958万円) 要介護の場合1,203万円(※2020年3月31日までは1,163万円) |
任意保険基準 | 1,100万円~1,500万円(※保険会社による) |
弁護士基準(裁判基準) | 2,370万円 |
保険会社が提示のために使う任意保険基準だと、裁判所で認定される弁護士基準よりも1,000万円以上低い額で提示されることになるので、示談交渉の際にはきちんと弁護士基準に計算しなおして交渉する必要があります。
後遺障害等級第2級の労働能力喪失率
後遺症が残ったときには後遺障害逸失利益の請求ができます。
後遺障害逸失利益の計算は次の計算式によって行われます。
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 |
後遺障害等級第2級に認定された場合、別表1・別表2のいずれでも労働能力喪失率は100%(100/100)として計算されます。
まとめ
本記事では、後遺障害等級第2級の主な症状と認定基準・慰謝料相場などについて解説しました。
後遺障害等級第2級は、第1級に次いで非常に重篤な後遺症が残った場合に認定されるものです。認定された場合の後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は非常に高額になり、保険会社との交渉も厳しいものになります。
第2級に適切に認定されることはもちろん、保険会社が提示する後遺障害慰謝料を弁護士基準で再計算し、不当な過失割合の主張には適切に反論することが重要です。そのためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。