後遺障害等級第5級の主な症状と認定基準・慰謝料相場について

後遺症が残るような大きな交通事故に遭った場合、症状固定と判断された後、後遺障害等級認定を受けることになります。後遺障害等級によって、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の金額が大きく変わります。

本記事では、後遺障害等級第5級について、認定の対象となる主な症状と認定基準・慰謝料などについて解説します。

後遺障害等級第5級

後遺障害等級第5級については「自動車損害賠償保障法施行令 別表第2」で次のように定められています。

1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4. 一上肢を手関節以上で失つたもの
5. 一下肢を足関節以上で失つたもの
6. 一上肢の用を全廃したもの
7. 一下肢の用を全廃したもの
8. 両足の足指の全部を失つたもの

自動車損害賠償保障法施行令 別表第2

一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの

交通事故による目の負傷で「一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

失明とは次の状態を指します。

目についての障害には他に次のような等級認定がされることがあります。

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

怪我によって「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

高次脳機能障害の場合、次の4つの能力のうち 1つがほとんど失われている、または 2つの能力が半分程度失われている 状態が該当します。

外傷性脳損傷により身体的な機能障害が残っている場合は次に該当する場合に第5級の認定がされます。

脊髄損傷の場合は次に該当する場合に第5級の認定がされます。

神経系統の機能又は精神の障害としては、他にも次のような等級に認定されることがあります。

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

怪我によって「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

胸腹部臓器とは、呼吸器・循環器・腹部臓器・泌尿器・生殖器などがこれに該当しますが、第5級に認定される場合として次の場合が挙げられます。

対象となる胸腹部臓器	内容
呼吸器の障害	動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下で、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲（37Torr以上43Torr以下）にある
小腸の障害	人工肛門を造設したもの 小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの 小腸皮膚瘻を残すもの 小腸内容が漏出することにより小腸皮膚瘻周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの
大腸の障害	人工肛門を造設したもの 大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの
尿管、膀胱及び尿道の障害	非尿禁制型尿路変向術を行ったもの 尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの

胸腹部臓器の機能の障害については、ほかに次のような等級に認定されることがあります。

一上肢を手関節以上で失ったもの

腕の怪我によって「一上肢を手関節以上で失ったもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

「失ったもの」とは事故や手術で切断したことをいいます。

上肢の怪我としては他に次のような場合があります。

一下肢を足関節以上で失つたもの

足の怪我によって「一下肢を足関節以上で失ったもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

下肢の怪我として、他に次のようなケースが挙げられます。

一上肢の用を全廃したもの

腕の怪我によって「一上肢の用を全廃したもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

「用を全廃した」とは神経が断裂するなどして動かなくなったことをいいます。

両上肢の用を全廃した場合には第1級の認定がされます。

一下肢の用を全廃したもの

足の怪我によって「一下肢の用を全廃したもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

「用を全廃した」とは神経が断裂するなどして動かなくなったことをいいます。

両下肢の用を全廃した場合には第1級の認定がされます。

両足の足指の全部を失ったもの

足の怪我によって「両足の足指の全部を失ったもの」に該当する場合には後遺障害等級第5級の認定がされます。

足指の怪我については以下の等級に認定される可能性があります。

複数の後遺症によって第5級と認定される場合もある：併合

上記の症状がなくても、複数の軽い後遺症が重なって5級と認定される「併合」という仕組みがあります。

複数の後遺症がある場合、それぞれの後遺症が第5級より軽い場合でも、併合により等級認定されることがあります。

併合で第5級と認定されるパターンとしては次のケースがあります。

具体的に該当しない場合でも第5級と認定される場合もある：相当

具体的に第5級の等級に規定されている場合ではなくても、症状から第5級に認定する「相当」という仕組みがあります。

後遺障害等級認定は、後遺障害等級表に規定されていなくても、第5級に相当するような症状がある場合には、第5級として取り扱う場合があります。これが「相当」です。

後遺障害等級第5級の後遺障害慰謝料

後遺障害等級第5級の後遺障害慰謝料は次の通りです。

基準	後遺障害慰謝料の額
自賠責基準	618万円（※2020年3月31日までは599万円）
任意保険基準	700万円～800万円程度（※保険会社による）
弁護士基準（裁判基準）	1,400万円

保険会社が提示する任意保険基準の金額は、裁判所で認定される弁護士基準と比べて半分近く低くなることがあります。そのため、示談交渉では弁護士基準で金額を再計算し、適正な補償を受けられるように交渉することが重要です。

後遺障害等級第5級における労働能力喪失率

後遺症が残ったときには後遺障害逸失利益の請求ができます。

後遺障害逸失利益の計算は次の計算式によって行われます。

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

後遺障害等級第5級に認定された場合、労働能力喪失率は、79/100として計算されます。

まとめ

本記事では、後遺障害等級第5級の主な症状と認定基準・慰謝料相場などについて解説しました。

後遺障害等級第5級の労働喪失率は79/100とあるとおり、労働能力の大部分を欠く重篤な後遺症が残っている状態です。

そのため、後遺障害等級の認定を確実に受け、弁護士基準で慰謝料を再計算した上で、過失割合などの交渉も適切に行うことが重要です。できるだけ早い段階で弁護士に相談し、適正な示談金を受け取ることをおすすめします。