後遺障害等級第6級の主な症状と認定基準・慰謝料相場について

後遺症が残るような大きな交通事故に遭った場合、症状固定といわれる状態になった後に後遺障害等級認定を行うことになります。後遺障害等級が何級に認定されるかは、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の計算に大きく関わります。

本記事では、後遺障害等級第6級について、認定の対象となる主な症状と認定基準・慰謝料などについて解説します。

後遺障害等級第6級

後遺障害等級第6級については「自動車損害賠償保障法施行令 別表第2」で次のように定められています。

1. 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

自動車損害賠償保障法施行令 別表第2

両眼の視力が0.1以下になったもの

目の怪我によって「一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

目についての障害には他に次のような等級認定がされることがあります。

咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

顔や顎の怪我によって「咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

咀嚼とは、食べ物を噛むことをいい、「咀嚼機能に著しい障害を残す」とは、お粥やこれに準じるものしか食べられない状態のことです。流動食しか食べられなくなった「咀嚼機能を廃した」場合まで進むと第3級の認定がされます。

言語の機能に著しい障害を残すものとは、次のうち2音しか発音できない場合をいいます。

また、発音できない音が1種類のみであっても、綴音（てつおん：語音をつなげること）が困難な場合は、言語の機能に著しい障害を残すものと認定されます。

咀嚼及び言語の機能の障害については他にも次のような等級認定がされることがあります。

両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

耳の怪我によって「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」とは次のいずれかに該当する場合をいいます。

聴力の後遺症がこの状態に達していなくても、次の認定がされる場合があります。

一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

耳の怪我によって「一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

「一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」の認定基準は、1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上になったことです。

脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの

背中などの怪我によって「脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

「脊柱に著しい変形を残すもの」といえるのは、レントゲン・CT・MRIにより、せき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。

「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頸部及び胸腰部が強直したものをいいます。

脊柱に関する後遺症については、ほかにも次のような認定がされる可能性があります。

一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

腕の怪我によって「一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

「関節の用を廃した」と認定されるのは次の場合です。

上肢の怪我による障害については、他に次のような等級に認定される可能性があります。

複数の一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

足の怪我によって「複数の一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

「関節の用を廃した」と認定されるのは上肢の場合と同様です。

下肢の怪我については次のような認定をされることもあります。

一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの

手の怪我によって「一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの」に該当する場合には後遺障害等級第6級の認定がされます。

「手指を失ったもの」とは、親指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったことをいい、具体的には次の通りです。

指の後遺症には他にも次のようなものがあります。

後遺症によって第6級と認定される場合もある：併合

上記の症状がなくても、複数の軽い後遺症が重なって第6級と認定される「併合」という仕組みがあります。

複数の後遺症がある場合、それぞれの後遺症が第6級より軽い場合でも、併合により等級認定されることがあります。

併合で第6級と認定されるパターンとしては次のケースがあります。

具体的に該当しない場合でも第6級と認定される場合もある：相当

具体的に第6級の等級に規定されている場合ではなくても、症状から第6級に認定する「相当」という仕組みがあります。

後遺障害等級認定は、後遺障害等級表に規定されていなくても、第6級に相当するような症状がある場合には、第6級として取り扱う場合があります。これが「相当」です。

後遺障害等級第6級の後遺障害慰謝料

後遺障害等級第6級の後遺障害慰謝料は次の通りです。

基準	後遺障害慰謝料の額
自賠責基準	512万円（※2020年3月31日までは498万円）
任意保険基準	600万円～700万円程度（※保険会社による）
弁護士基準（裁判基準）	1,180万円

保険会社が提示のために使う任意保険基準だと、裁判所で認定される弁護士基準の半分近くの低い額で提示されることがあります。そのため、示談交渉の際にはきちんと弁護士基準に計算しなおして交渉することが欠かせません。

後遺障害等級第6級の労働能力喪失率

後遺症が残ったときには後遺障害逸失利益の請求ができます。

後遺障害逸失利益の計算は次の計算式によって行われます。

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

後遺障害等級第6級に認定された場合、労働能力喪失率は、67/100で計算します。

まとめ

本記事では、後遺障害等級第6級の主な症状と認定基準・慰謝料相場などについて解説しました。

後遺障害等級第6級の労働喪失率は67/100であり、これは労働能力の半分以上を失う重篤な後遺症が残っている状態を意味します。そのため、後遺障害等級認定を確実に取得し、適切な補償を得る必要があります。

それには、慰謝料は弁護士基準で再計算することが重要です。また、保険会社が主張する可能性のある過失割合など、他の要素についても交渉が必要です。後遺障害等級認定のサポートを受ける段階から弁護士に相談し、適切な示談金を得るようにしましょう。