ひき逃げの被害に遭った時にやるべきこと
ひき逃げに遭ってしまった方の中には、「治療費や慰謝料を払ってもらえないのでは?」と不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
ひき逃げで加害者が特定できない場合でも、「政府保障事業制度」を利用することで最低限の賠償は受けられます。ですが、適正な賠償を受けるためには、加害者を特定することが重要です。
今回は、ひき逃げの被害に遭ってしまった方に向けて、ひき逃げの発生から賠償を受けるまでの流れ、加害者を特定するためにすべきこと、加害者を特定できない場合の対処法について解説します。
ひき逃げから示談交渉(賠償を受ける)までの流れ
ひき逃げに遭ってから賠償を受けるまでの流れは、次のとおりです。
- 警察に報告する
- 病院で診察を受ける
- 怪我の治療を継続する
- 賠償金(治療費や慰謝料)を請求する
それぞれの段階での手続きについて詳しく解説します。
なお、加害者が特定できている交通事故の解決までの流れは、こちらの記事で詳しく解説していますので気になる方はご確認ください。
警察に報告する
ひき逃げに遭ってしまった場合でも、初動の対応は通常の交通事故と変わりありません。まずは、警察に交通事故の発生を報告してください。
交通事故を警察に報告することは、道路交通法上の義務です。被害者も報告義務を負うため、ひき逃げに遭ったときは、すぐに警察に報告しなければなりません。警察への報告を怠ると、被害者自身が罰則を科される可能性もあります。警察が加害者を検挙することもなくなりますし、交通事故証明書が発行されないため、賠償の手続きも進められなくなるでしょう。
加害者は、警察への報告義務だけでなく、被害者を救護する義務も負っています。ひき逃げには、報告義務違反と救護義務違反が成立します。さらに、運転の状況に応じて危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪などが成立するため、ひき逃げの加害者には重い処罰が科される可能性が高いです。
病院で診察を受ける
事故の直後に自覚症状がない場合でも、ひき逃げに遭ったときはすぐに病院で診察を受けてください。
むち打ち症や脳機能障害などは、時間が経ってから症状が現れることもあります。事故から時間を空けて病院に行った場合、事故と怪我との因果関係が認められずに治療費や慰謝料の支払いを受けられなくなる可能性があります。
後日、加害者が発見された場合や政府保障事業制度を利用する場合などに備えて、まずは病院での診察を受けておくことが重要です。
怪我の治療を継続する
加害者が見つからない場合でも、医師の指示に従って怪我の治療は継続しなければなりません。
勝手な判断で怪我の治療を中断してしまうと、加害者が見つかったときでも適正な賠償を受けられなくなったり、本来なら治る怪我が治らなくなったりする可能性があります。治療費の負担が厳しいときには、自分の任意保険や健康保険を利用することで、負担を抑えられます。
賠償金(治療費や慰謝料)を請求する
怪我の治療を終えるまでに加害者が特定されれば、加害者に損害賠償を請求します。通常は、加害者側の保険会社を窓口として示談交渉を進めていくことになるでしょう。
加害者と示談交渉を進める際には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すると適正な賠償金の額を知ることができますし、弁護士に示談交渉を一任することも可能です。
加害者が特定できていないときには、自分の任意保険や政府保障事業制度を利用して賠償金の支払いを受けられます。
加害者を特定するためにすべきこと
ひき逃げの検挙率は高く、令和3年の記録では全体の70%以上が検挙されています。被害者が重症を負ったり、死亡したりしたケースでは、さらに高い検挙率となっています。
検挙の可能性を高めるには、被害者の行動も重要です。ここでは、加害者を特定するために被害者がすべきことを解説します。
車両のナンバー・特徴を記録する
ひき逃げに遭った際に、加害車両を確認できる状況であれば、車両のナンバーや特徴を確認して、しっかりと記録しておきましょう。
特に、車両のナンバーは、それだけで加害者を特定できる可能性のある重要な情報です。スマホで撮影する、記憶してすぐにメモを取るなどして、「確認したのに忘れてしまった」といったことがないようにしてください。
目撃者と連絡先を交換する
事故の目撃者がいるときには、連絡先を交換して今後の捜査に協力してもらえるようにしてください。目撃者の車両にドライブレコーダーが搭載されていた場合には、有力な証拠として活用できるでしょう。
加害者を特定できない場合の対処法
加害者を特定できない場合に賠償金の支払いを受けるための対処法としては、次の2つがあります。
- 自分の保険を利用する
- 政府保障事業制度を利用する
それぞれの対処法について詳しく解説します。
自分の保険を利用する
自分の任意保険に、人身傷害保険や無保険車損害保険が付帯されているときには、自分の保険から治療費や慰謝料などの支払いを受けられます。
人身傷害保険や無保険車損害保険は、利用しても保険の等級が上がることはありません。人身傷害保険は、交通事故による死亡、後遺障害、怪我を補償対象としており、加害者が不明の場合でも利用できます。無保険車損害保険についても、加害者が不明の場合に利用できますが、補償対象は交通事故による死亡と後遺障害に限られており、怪我をしただけでは利用できません。
ひき逃げで怪我をした場合には、人身傷害保険を利用して治療費や慰謝料を請求できます。
政府保障事業制度を利用する
政府保障事業制度は、無保険やひき逃げ事故の被害者に対して、国が実施している救済制度です。政府保障事業制度を利用すると、自賠責保険と同等の基準で、治療費や慰謝料を受け取ることができます。