下肢(脚)の後遺症|後遺障害認定のポイントは?

下肢(脚)の後遺症|後遺障害認定のポイントは?

交通事故に遭い、症状固定時に下肢に後遺症が残った場合、その症状の内容や程度が、自動車損害賠償法施行令が規定する後遺障害等級表(別表第2)のどの等級に該当するかによって、被害者が得られる損害賠償金が大きく違ってきます。

被害者にとっては、適切な後遺障害等級認定を受けられるかどうかが重要になります。そのためには、交通事故に強い弁護士に依頼すべきだといわれています。

下肢に後遺症が残った場合、後遺障害認定のポイントは何なのでしょうか。以下においては、下肢についての基本的な説明および後遺障害認定のポイントなどについて解説します。

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目次

下肢とは

下肢とは

下肢とは、股関節、ひざ関節、足関節と足の指部分をいいます(ただし、本稿では、足の指部分を除いて説明します)。

下肢の後遺障害とは

下肢の後遺障害、欠損傷害、機能障害、変形障害、短縮傷害


下肢の後遺障害としては、欠損障害、機能障害、変形障害および短縮障害が考えられます。
以下で、一つずつ見ていきましょう。

欠損障害

欠損障害とは、下肢の全部または一部を失ってしまう障害のことをいいます。

欠損障害の後遺障害等級

下肢欠損傷害の後遺障害等級
  1. 1級5号(両下肢をひざ関節以上で失ったもの)
  2. 2級4号(両下肢を足関節以上で失ったもの)
  3. 4級5号(1下肢をひざ関節以上で失ったもの)
  4. 4級7号(両足をリスフラン関節以上で失ったもの)
  5. 5級5号(1下肢を足関節以上で失ったもの)
  6. 7級8号(1足をリスフラン関節以上で失ったもの)
用語の説明(クリックで開閉)
  1. 「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、㊀股関節において寛骨と大腿骨を離断したもの、㋥股関節とひざ関節との間において切断したもの、㊂ひざ関節において、大腿骨と脛骨および腓骨とを離断したもののいずれかに該当するものをいいます。
  2. 「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、㊀ひざ関節と足関節との間において切断したもの、㋥足関節において、脛骨および腓骨と距骨とを離断したもののいずれかに該当するものをいいます。
  3. 切断とは、下肢が骨の部分で切り離された状態をいいます。
  4. 離断とは、下肢の関節の部分で切り離された状態をいいます。
  5. リスフラン関節とは、5本の中足骨(足指の骨)それぞれと足の甲の間にある関節のことをいいます。
  6. 「リスフラン関節以上で失ったもの」とは、㊀足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨および3個の楔状骨からなります)において切断したもの、㋥リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもののいずれかに該当するものをいいます。

機能障害

機能障害とは、下肢の関節が強直したり、下肢の関節の可動域が制限されてしまう障害のことをいいます。

機能障害の後遺障害等級

機能障害の後遺障害等級
  1. 1級6号(両下肢の用を全廃したもの)
  2. 5級7号(1下肢の用を全廃したもの)
  3. 6級7号(1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの)
  4. 8級7号(1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの)
  5. 10級11号(1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの)
  6. 12級7号(1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの)
用語の説明(クリックで開閉)
  1. 「関節が強直した」とは、関節の完全強直またはこれに近い状態にあるものをいいます。
  2. 「関節の完全強直」とは、関節が全く動かない状態をいいます。
  3. 「これに近い状態」とは、関節可動域が、原則として健側(障害のない側)の関節可動域角度の10%程度以下に制限されている状態をいいます。
  4. 10%程度とは、健側の関節可動角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げて計算した角度をいいます。
  5. 「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)のすべてが強直したものをいいます。 
  6. 「関節の用を廃したもの」とは、㊀関節が強直したもの、㋥関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、㊂人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもののいずれかに該当するものをいいます。
  7. 完全弛緩性麻痺とは、末梢神経の損傷などにより弛緩性麻痺となり、自動(本人が自発的に曲げること)では関節を完全に動かせなくなった状態をいいます。 
  8. 6の㋥の「これに近い状態」とは、他動(医師が手を添えて曲げること)では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものをいいます。
  9. 「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、㊀関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、㋥人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、6の㊂以外のもののいずれかに該当するものをいいます。
  10. 「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。

変形障害

変形障害とは、下肢に偽関節を残したり、長管骨に癒合不全を残してしまう障害のことをいいます。

変形障害の後遺障害等級

変形障害の後遺障害等級
  1. 7級10号(1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの)
  2. 8級9号(1下肢に偽関節を残すもの)
  3. 12級8号(長管骨に変形を残すもの)
用語の説明(クリックで開閉)
  1. 偽関節とは、骨折した部分がつながらず、関節のように可動している状態をいいます。
  2. 運動障害とは、上肢が強直したり、動きにくくなってしまう障害のことをいいます。
  3. 癒合不全とは、骨折したところが通常の期間を過ぎても、骨癒合(離れていた組織が付着すること)に至らず、不完全な状態で停止してしまうことをいいます。
  4. 「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、㊀大腿骨の骨幹部または骨幹端部(以下「骨幹部等」といいます)に癒合不全を残すもの、㋥脛骨および腓骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの、㊂脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すもののいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。
  5. 硬性補装具とは、プラスチックまたは金属製の支柱で作られた装具をいいます。
  6. 「偽関節を残すもの」とは、㊀大腿骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、4の㊀以外のもの、㋥脛骨および腓骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、4の㋥以外のもの、㊂脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、4の㊂以外のもののいずれかに該当するものをいいます。
  7. 下肢の「長管骨に変形を残すもの」とは、①大腿骨に変形を残すもの、②脛骨に変形を残すもの(腓骨のみの変形でも、その程度が著しいものはこれに該当します)のいずれかに該当し、外部から想見できる(見て分かる)程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)以上のもの、㋥大腿骨もしくは脛骨の骨端部に癒合不全を残すものまたは腓骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの、㊂大腿骨または脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの、㊃大腿骨または脛骨(骨端部を除きます)の直径が2/3以下に減少したもの、㊄大腿骨が外旋45度以上または内旋30度以上回旋変形癒合していることは、①外旋変形癒合にあっては股関節の内旋が0度を超えて可動できないこと、内旋変形癒合にあっては、股関節の外旋が15度を超えて可動できないこと、②X線写真等により、明らかに大腿骨の回旋変形癒合が認められることのいずれにも該当することが確認されるもの、以上のいずれかに該当するものをいいます。なお、㊀~㊄の変形が同一の長管骨に複数存する場合もこれに含まれます。
  8. 外旋とは、正中線から遠ざけるような動き(外側に回転させる動き)をいいます。
  9. 内旋とは、正中線に近づける動き(内側に回転させる動き)をいいます。
  10. 回旋とは、体の一部を中心軸に沿って回転させる動作をいいます。

短縮障害

短縮障害とは、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さが健側の下肢と比較して短くなってしまう障害のことをいいます。

短縮障害の後遺障害等級

短縮障害の後遺障害等級
  1. 8級5号(1下肢を5センチメートル以上短縮したもの)
  2. 10級8号(1下肢を3センチメートル以上短縮したもの)
  3. 13級8号(1下肢を1センチメートル以上短縮したもの)
用語の説明(クリックで開閉)
  1. 上前腸骨棘とは、骨盤の横の骨(腸骨)の一番突出している部分のことをいいます。
  2. 下腿内果下端とは、くるぶしの最も下の部分のことをいいます。

後遺障害認定のポイント

下肢の後遺障害認定のポイントは、どのようなものなのか、以下で見てみましょう。

後遺障害認定のポイント
  • 機能障害における可動域
  • 画像所見
  • 後遺障害診断書の記載および添付

機能障害における可動域

可動域制限が生じている場合には、医師に可動域の測定を正確に行ってもらい、後遺障害診断書にその結果を記載してもらいます。

そして、可動域制限の原因となっている器質的損傷(身体の組織そのものに生じた損傷)が、画像所見から医学的に証明される必要があります。

画像所見

交通事故によって、器質的損傷が生じたことは、X線写真、CTやMRI画像によって認められる必要があります。X線写真には映らない損傷もありますので、MRI画像を撮ることが望ましいといえます。

なお、画像上で損傷が認められない場合には、事故との因果関係が否定される可能性があります。

後遺障害診断書の記載および添付

後遺障害診断書には、上述した可動域の制限や画像所見のほか、症状が事故後から症状固定まで一貫して続いていることについても記載してもらいます。

後遺障害診断書には、欠損障害の切断および離断部位の図示が、変形障害の偽関節および長管骨の癒合不全について、その部位の記載およびX線写真の添付が、短縮障害の短縮の計測の記載が、それぞれ求められます。

医師は、診断や治療の専門家であって、後遺障害等級認定を行う専門家ではありませんので、医師作成の後遺障害診断書については、弁護士に相談してアドバイスを受けるか、その内容をチェックしてもらうようにしましょう。

まとめ

交通事故により下肢に障害を負った場合、その後遺障害としては、上述したように、欠損障害、機能障害、変形障害および短縮障害の等級認定の可能性があります。

過不足のない後遺障害診断書を作成してもらうためには、弁護士のサポートが欠かせません。

交通事故に遭って下肢に後遺症が残り、適切な後遺障害等級認定を受けられるか不安を抱いている方は、是非、交通事故に強い当事務所にご相談ください。

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