半月板損傷|後遺障害認定のポイントは?
交通事故に遭い、症状固定時に半月板損傷の後遺症が残った場合、その症状の内容や程度が、自動車損害賠償法施行令が規定する後遺障害等級表(別表第2)のどの等級に該当するかによって、被害者が得られる損害賠償額が大きく違ってきます。
被害者にとっては、適切な後遺障害等級認定を受けられるかどうかが重要になります。そのためには、交通事故に強い弁護士に依頼すべきだといわれています。
では、半月板損傷の後遺症が残った場合、後遺障害認定のポイントは何なのでしょうか。以下においては、半月板損傷についての基本的な説明および後遺障害認定のポイントなどについて解説します。
半月板とは
半月板とは、膝関節の大腿側の軟骨と脛骨側の軟骨の間にあるC型をした繊維軟骨のことをいいます。
半月板損傷
半月板損傷とは、膝関節内にある半月板が割れたり、ひびが入ったりして傷ついた状態のことをいいます。
半月板損傷の原因
交通事故では、自動車の運転者や助手席の同乗者がダッシュボードに膝を強打したり、バイク乗車中に転倒して膝を強打したりして、膝をひねったりすることで発症するケースが多いといわれています。
半月板損傷の症状
膝関節の痛み、ひっかかり感(キャッチング)、可動域制限(膝を動かす範囲を制限されることで、しっかり膝を伸ばしたり曲げたりできなくなります)、関節の腫脹などが生じます。また、損傷した半月板が関節内に挟まりこみ、ロッキングという関節がロックされた状態に陥ることがあります。
半月板損傷の後遺障害
半月板損傷の後遺障害としては、機能障害および神経障害が考えられます。以下で、一つずつ見ていきましょう。
機能障害
機能障害とは、膝関節が強直したり、膝関節の可動域が制限されてしまう障害のことをいいます。
機能障害の後遺障害等級
- 8級7号(1下肢の3大関節の中の1関節の用を廃したもの)
- 10級11号(1下肢の3大関節の中の1関節の機能に著しい障害を残すもの)
- 12級7号(1下肢の3大関節の中の1関節の機能に障害を残すもの)
用語の説明(クリックで開閉)
- 「関節が強直した」とは、関節の完全強直またはこれに近い状態にあるものをいいます。
- 「関節の完全強直」とは、関節が全く動かない状態をいいます。
- 「これに近い状態」とは、関節可動域が、原則として健側(障害のない側)の関節可動域角度の10%程度以下に制限されている状態をいいます。なお、関節可動域が10度以下に制限されている場合はすべて「これに近い状態」に該当するものと取り扱われます。
- 10%程度とは、健側の関節可動角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げて計算した角度をいいます。
- 「下肢の3大関節の中の1関節」とは、半月板損傷では3大関節(股関節、膝関節、足関節)中の膝関節のことを指します。
- 「関節の用を廃したもの」とは、㊀関節が強直したもの、㋥関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、㊂人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもののいずれかに該当するものをいいます。
- 完全弛緩性麻痺とは、末梢神経の損傷などにより弛緩性麻痺となり、自動(本人が自発的に曲げること)では関節を完全に動かせなくなった状態をいいます。
- 6の㋥の「これに近い状態」とは、他動(医師が手を添えて曲げること)では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものをいいます。
- 「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、㊀関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、㋥人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、6の㊂以外のもののいずれかに該当するものをいいます。
- 「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。
神経障害
神経障害とは、半月板損傷の部位に痛みやしびれが残ってしまう障害のことをいいます。
神経障害の後遺障害等級
- 12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
- 14級9号(局部に神経症状を残すもの)
用語の説明(クリックで開閉)
- 神経症状とは、神経の圧迫によって生じる痛みやしびれの症状をいいます。
- 「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、自覚症状(痛みやしびれ)が、他覚的所見によって、医学的に証明できた場合をいいます。
- 「局部に神経症状を残すもの」とは、自覚症状(痛みやしびれ)が、医学的に説明できた場合をいいます。
- 他覚的所見とは、マクマレー・テストやグリンディング・テストなどの理学的検査、X線画像検査、CT画像検査、MRI画像検査、関節鏡検査などの画像所見のことをいいます。
- 「医学的に証明できた」とは、自覚症状が、他覚的所見によって、客観的に異常所見と確認されたことをいいます。
- 「医学的に説明できた」とは、自覚症状が、他覚的所見は認められないものの、医師による理学的検査と一致し、事故の規模・態様、治療経過などから、自覚症状が事故後から症状固定まで一貫して続いていて、将来においても回復困難と認められる場合のことをいいます。
- マクマレー・テストとは、仰向けで膝を最大限に曲げた状態で、膝から足首にかけての部分をひねりながら膝を伸ばしていき、痛みや異常音がないか確認する徒手検査のことをいいます。
- グリンディング・テストとは、うつぶせで膝を90度に曲げた状態で、かかとを下に押しつけながら回し、痛みがないか確認する徒手検査のことをいいます。
- 徒手検査とは、医師自身が自らの目と手で患者の状況を把握しながら行う検査のことをいいます。
- 内視鏡検査とは、内視鏡を小切開で膝関節に挿入し、モニター画面に映し出された映像を確認しながら関節内の状態を調べる検査法のことをいいます。
後遺障害認定のポイント
半月板損傷の後遺障害認定のポイントは、どのようなものなのか、以下で見てみましょう。
- 徒手検査による確認
- 機能障害における可動域制限
- 画像所見
- 後遺障害診断書の記載
- 因果関係
徒手検査による確認
患者は、自覚症状を訴え、必要な徒手検査(マクマレー・テストやグリンディング・テスト)を受け、痛みの反応を観察してもらいます。検査結果から、半月板損傷の疑いがある場合は、MRI画像検査を実施します。
機能障害における可動域制限
可動域制限が生じている場合には、医師に可動域の測定を正確に行ってもらいます。また、定期的に通院し、治療中は複数回可動域の測定を行ってもらい、後遺障害診断書にそれらの結果を記載してもらいます。
そして、可動域制限の原因となっている器質的損傷(身体の組織そのものに生じた半月板損傷)が、画像所見から医学的に証明される必要があります。
画像所見
半月板は、加齢により傷つきやすく、事故以外でも損傷する可能性がありますので、交通事故に遭った後、なるべく早く病院でMRI画像検査(半月板損傷はX線では撮影できません)を受ける必要があります。そして、MRI画像検査は、トラブルを未然に防ぐためにも、治療開始時と治療終了時に必ず受けるようにしましょう。それと併せて、半月板損傷を直接確認できる内視鏡検査を受けるとよいでしょう。
交通事故によって、器質的損傷が生じたことは、MRI画像検査等によって認められる必要があります。
後遺障害診断書の記載
後遺障害診断書には、上述した徒手検査による確認、可動域制限や画像所見のほか、症状が事故後から症状固定まで一貫して続いていることについても記載してもらいます。
医師は、診断や治療の専門家であって、後遺障害等級認定を行う専門家ではありませんので、医師作成の後遺障害診断書については、弁護士に相談してアドバイスを受けるか、その内容をチェックしてもらうようにしましょう。
因果関係
後遺障害の等級認定がされるためには、交通事故と半月板損傷との間に因果関係が認められる必要があります。半月板損傷は、スポーツなどの怪我で生じたり、加齢により強度が弱まった場合は立ち上がりや階段などの軽微な力で損傷を起こすことがあるため、実務上、半月板損傷が交通事故と因果関係があるか争われることがあります。
まとめ
交通事故により半月板損傷を負った場合、その後遺障害としては、上述したように、機能障害および神経障害の等級認定の可能性があります。
過不足のない後遺障害診断書を作成してもらうためには、弁護士のサポートが欠かせません。
交通事故に遭って半月板損傷の後遺症が残り、適切な後遺障害等級認定を受けられるか不安を抱いている方は、是非、交通事故に強い当事務所にご相談ください。