バイクのすり抜けでの交通事故の過失割合の考え方

交通事故の主体がバイクである場合、バイクのすり抜けが交通事故に影響を与えることがあります。交通事故の過失割合を考えるにあたって、バイクのすり抜けはどのように考えるべきなのでしょうか。
本記事では、バイクのすり抜けについて交通事故の過失割合でどのように考えるべきかを解説します。
バイクのすり抜けは道路交通法上では追い抜きもしくは追い越し
交通事故における過失割合を検討するにあたって、道路交通法上どのような義務が課せられているのかが問題となります。バイクのすり抜けは道路交通法上規定が無く、道路交通法の上では、追い越しもしくは追い抜きと評価されることになります。
追い越しとは進路を変更して前方車両の前に出ることをいい、追い抜きとは、進路を変更せずに前方車両の前に出ることをいいます。
追い越し禁止標識がある場合や、センターラインが黄色の実線の場合は追い越しが禁止されています。また、交差点や路側帯では追い抜きおよび追い越しの両方が禁止されているなど、明確なルールがあります。したがって、バイクがすり抜けを試みる際にこれらの禁止行為を行うと、交通ルール違反となり、バイク側の過失が認定されることになります。
バイクのすり抜けでの過失割合はどのように考えられるのか
では、バイクのすり抜けで交通事故が発生した場合、過失割合はどのように考えられるのでしょうか。
過失割合とは
過失割合とは、過失相殺の規定に基づいて、交通事故における当事者の過失を勘案した責任の割合を指すものです。
交通事故における損害賠償の根拠となる、民法の不法行為損害賠償請求(民法第709条以下)において、被害者にも過失がある場合にはその過失を損害賠償請求において考慮する旨が規定されています(過失相殺:民法第722条第2項)。交通事故においては、例えば赤信号無視の交差点事故で被害者もスピード違反をしていた、という風に被害者にも過失がある場合があり、過失相殺が問題になります。
過失割合はこの過失相殺をするにあたって、どの程度の責任割合があるのかを示すものです。たとえば、被害者に事故結果に対する責任が2割ある場合、過失割合は8:2(または80:20)とされ、発生した損害から2割が減額されます。
過失割合の考え方
過失割合については個別にどちらがどの程度責任を負うべきかを考えるのですが、交通事故は過去の判例や事例の蓄積があり、これに基づいて実務上考え方が決まっています。まず交通事故の当事者や状況に応じた基本割合を求め、そこから個々の修正要素によって最終的な過失割合を求めます。
バイクのすり抜けの過失割合
ではバイクのすり抜けによってどのような過失割合になるかを、次の3つのケースに応じて確認しましょう。
停車中の車をバイクがすり抜けようとして発生した事故
まず停車中の車をバイクがすり抜けようとして事故が発生した場合の基本の過失割合はバイク10:車0とされています。
停車中の車には基本的に過失を認めることができないため10:0とされますが、車の止め方が不適切であった場合には車に10%程度の過失が認められることがあり、9:1と修正されることがあります。
停車中の車が開けた扉に、すり抜けようとするバイクが接触した事故
停車中の車が扉を開けて、そこにすり抜けようとするバイクが接触した事故の場合、過失割合が逆転し車9:バイク1となります。車の扉を開ける場合には周囲の確認をきちんとすべきであり、すり抜けてきたバイクとぶつかった場合には車は事故の責任を負わなければならないためです。
もっとも、夜間である場合やハザードランプを点灯せずに扉を開けた場合には車側に加算されるように過失割合が修正される一方、すり抜けようとするバイクの前方不注意やスピード違反がある場合はバイク側に加算されるように過失割合が修正されます。
左折する車とすり抜けようとするバイクが接触した事故
交差点で左折をしようとして、すり抜けようとするバイクが接触した事故の基本の過失割合は、車8:バイク2となっています。
交差点で左折する際は、他車との巻き込みを防ぐための注意義務があり、これを怠った場合、車が加害者とされ、すり抜けようとするバイクの過失を考慮して最終的な過失割合が決定されます。もっとも、すり抜けをするバイクの前方不注意やスピード違反などによって10%~20%程度修正されることがあります。
過失割合は必ず弁護士に相談するのがおすすめ
もしバイクのすり抜け事故で、保険会社の主張に納得がいく場合でも、一度弁護士に相談することをおすすめします。
保険会社は支払い額を少なくするために、自社に有利な形で過失割合の主張をすることが多いです。前提となる事実関係に相違があったり、異なる過失割合が主張されることが非常に多いため、正しい過失割合で反論する必要があります。そのため、どのような場合でも一度は弁護士に相談してみてください。
まとめ
本記事ではバイクのすり抜けでの交通事故の過失割合について解説しました。
バイクのすり抜けでの交通事故の過失割合を確認するためには、どのような事故かと基本の過失割合や修正要素の有無の確認が不可欠です。それらの調査は非常に難解なので、弁護士に相談することをおすすめします。