交通事故の休業損害とは?計算方法やいつ貰えるのかなどを紹介
交通事故被害者になった場合治療を最優先にしたいところですが、「仕事をしなければ生活ができない」という方も多いことかと思います。
交通事故による怪我によって仕事を休まざるを得なくなった場合には、減少した収入分を加害者に請求することができます。この減少した収入のことを休業損害と言います。
休業による損害が大きい場合や、休業日数が長期にわたる場合には、適正な休業損害を受け取るためにも弁護士に依頼することをおすすめします。
この記事では、「休業損害とはどのようなものか?計算方法やいつ貰えるのか」や「自賠責保険で気を付けたいこと」について紹介しています。
休業損害とは
休業損害とは、事故により仕事を休まざるを得ず減少した収入のことです。
休業損害に似た言葉に休業補償があります。休業損害と休業補償の違いは以下の通りです。
休業損害 | 休業補償 | |
---|---|---|
請求先 | 加害者 | 労災保険 |
請求額/日 | 6,100円~19,000円 | 平均賃金の80% |
対象者 | 全ての被害者 | 労災被保険者 |
対象の交通事故 | 全ての人身事故 | 勤務中の交通事故 |
有給休暇の取得 | 支給される | 支給されない |
上限額 | 120万円 | 上限なし |
※上限額120万円は自賠責保険の上限額となります。詳しくは自賠責保険で気を付けたいことをご覧ください。
休業損害の計算方法とは
休業損害の計算方法は「休業日数×基礎収入日額」で計算されます。
休業日数は、完治または症状固定までに、治療のために仕事を休んだ日数です。基礎収入日額は働き方によって計算方法が変わるので、給与所得者・自営業・家事従事者に分けて基礎収入日額がいくらになるかを紹介します。
給与所得者の場合
労働契約をして会社から給料や収入を得ている給与所得者の場合は、事故前の直近3カ月をベースに基礎収入日額を計算します。
3カ月の月給合計が90万円、勤務日数が60日の場合、基礎収入日額は90万円÷60日=1.5万円となります。
3カ月の月給合計は、残業代・手当などを含み、社会保険などの控除前の額面金額で計算します。
勤務する会社に休業損害証明書を記載してもらい相手方保険会社に提出します。
自営業者の場合
自営業の場合は、何日働いていくら貰うという形で働いていないケースがあります。基本的には前年度の確定申告の内容を元に基礎収入日額を計算していくことになります。
収入-経費=所得
所得÷365=基礎収入日額
自営業の中には、店舗契約の賃料や保険契約などの休んでいてもかかり続ける経費があります。営業していなくても必要な経費も損害として認められる可能性があります。
家事従事者の場合
家事従事者の場合でも休業損害は認められます。ただし、直接給料や収入を得ている訳ではないので、家事従事者の休業損害は賃金センサスを元に基礎収入日額を算定します。
賃金センサスとは、賃金構造基本統計調査の結果をまとめた平均賃金の目安となる資料
家事従事者の場合は、何日・何時間を休業日・休業時間とするのかの計算が難しいです。入院や通院であればわかりやすいのですが、自宅で療養していた日は休業日として計算されないことが多いです。
家事従事者の場合は、家事がどれだけ困難になったか等の資料を集めて適正な休業損害を主張する必要があります。
自賠責保険で気を付けたいこと
自賠責保険では、傷害による損害の上限額は120万円までとなっています。
傷害による損害には、「治療費・治療関係費・休業損害・入通院慰謝料」があり休業損害以外が大きい場合充分な休業損害を受け取ることができない可能性があります。
また、休業損害だけに限りませんが、算定基準によって受け取る損害賠償額が大きく変わります。
休業損害はいつもらえるのか?
休業損害は示談成立後に全額支払いが基本です。
しかし、仕事を休まざるを得なくなったことで収入が途絶えてしまうと生活が困難になることが予想されることもあり、加害者側保険会社に内払いを求めることができます。
内払いとは、交通事故の損害賠償金を示談成立前に一部を前払いすること
内払いを求める場合には、加害者側保険会社に「休業損害証明書」などの求められる資料を提出してください。保険会社によって様々ですが、請求から1週間~1カ月で休業損害の支払いが行われます。
休業損害はいつまでもらえるのか?
休業損害は完治または症状固定するまでの間に働けない日数分貰うことが出来ます。
症状固定とは、まだ治っておらず症状は依然として残っているものの、これ以上治療を行っても治療効果が期待できない状態を指します。
症状固定後も後遺障害が残り仕事に支障が出たり休業を余儀なくされる場合は、休業損害ではなく逸失利益として損害賠償を請求することになります。
まとめ
交通事故で仕事を休まざるを得なくなった場合は、休業損害を請求することが出来ます。休業損害額の計算方法は働き方によっても様々ですが、原則は「基礎収入日額×休業日数」にて計算します。
休業による損害が大きく保険会社が充分な補償をしてくれていない場合や、休業日数が長期にわたる場合には、適正な休業損害を受け取るためにも弁護士に依頼し交渉をしてもらうことをおすすめします。