無保険の加害者が自己破産した場合の損害賠償はどうなる?

交通事故の加害者が保険に加入していなかった場合、損害賠償は加害者本人に請求することになります。ところが、保険に加入していない加害者に損害賠償を支払う能力があるとは限りません。
加害者が損害賠償を支払わずに自己破産した場合、被害者の損害賠償請求権はどうなるのでしょうか。
今回は、無保険の加害者が自己破産した場合に損害賠償はどうなるのかを説明したうえで、加害者に損害賠償を請求できない場合の対処法について解説します。無保険の加害者との交通事故でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
無保険の加害者が自己破産した場合、損害賠償の支払い義務は免責されるか?
自己破産は、借金を返済できなくなった人が裁判所に申し立てて、借金の返済を免除してもらう手続きです。自己破産で免責が許可されると、非免責債権を除くすべての借金の返済が免除されます。
つまり、加害者が自己破産した場合に損害賠償の支払い義務が免除されるかどうかは、交通事故の損害賠償が非免責債権に該当するかどうかによって決まります。
非免責債権の例は、次のとおりです。
- 税金や社会保険料
- 養育費や婚姻費用
- 雇用契約に基づく賃金請求権
- 罰金
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
交通事故の損害賠償は、不法行為に基づく損害賠償権です(民法709条)。
そのため、交通事故が「悪意」によるものであるときには、損害賠償請求権は非免責債権となります。また、「人の生命または身体を害する」人身事故が「故意または重大な過失」によるものであるときも、非免責債権となります。
悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
「悪意」とは、積極的に相手方に害を加えることを意味します。交通事故の場合、保険金詐欺を目的として故意に事故を起こしたり、相手を負傷させる目的で意図的に追突したりする行為が、「悪意」による不法行為に該当する可能性があります。
このようなケースでは、損害賠償請求権が非免責債権となるため、加害者が自己破産した場合でも、損害賠償を請求できます。
故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
「故意」とは、相手方の生命や身体に危険が及ぶことを認識しながら、あえて行為に及ぶことを意味します。「重大な過失」とは、少しでも注意すれば、損害の発生を避けられたのに、注意を怠って損害を発生させたことを意味します。
次のようなケースでは、「故意」や「重大な過失」が認められる可能性が高いでしょう。
- 飲酒運転
- 無免許運転
- 信号無視・暴走運転 など
この場合にも、損害賠償請求権は非免責債権として、自己破産しても免責されません。ただし、損害賠償が免責されない場合でも、実際に賠償金を回収できるかどうかは別問題です。加害者に賠償義務が残っていたとしても、加害者に支払能力がなければ、加害者から賠償金を回収するのは現実的ではありません。
無保険の加害者に損害賠償を請求できない場合の対処法
無保険の加害者に損害賠償を請求できないケースとしては、次のようなものが挙げられます。
- 加害者は自己破産していないが支払能力がない
- 加害者が自己破産して損害賠償の免責が認められた
- 自己破産で免責は認められなかったが支払能力がない
こうしたケースで加害者に損害賠償を請求できない場合の対処法は、次のとおりです。
- 政府保障事業制度を利用する
- 被害者自身の任意保険を利用する
それぞれの対処法について詳しく解説します。
政府保障事業制度を利用する
加害者が無保険で損害賠償を請求できないときは、政府保障事業制度を活用すれば、自賠責保険と同じ基準で補償を受けることができます。政府保障事業制度は、加害者が自己破産をしたか否か、免責が認められたか否かにかかわらず利用できます。
加害者が賠償金を払えない場合の対処法や政府保障制度については、こちらの記事も併せてご覧ください。

なお、ここでの「無保険」とは加害者が自賠責保険にも加入していない場合を想定しています。加害者が自賠責保険に加入している場合は、自賠責保険に請求できるため、政府保障事業制度を利用することはできません。
被害者自身の任意保険を利用する
自身の任意保険に人身傷害保険や無保険車損害保険が付帯されている場合は、それらの保険を利用して賠償金を受け取ることができます。人身傷害保険や無保険車損害保険で支払われる金額は、自賠責保険の基準よりも高額に設定されています。
人身傷害保険は、被害者の怪我の程度にかかわらず利用できます。
無保険車損害保険は、被害者が死亡した場合もしくは後遺障害を負った場合にのみ利用できますが、補償額は人身傷害保険よりも高く設定されていることが多いです。