後遺障害が認定されない理由と異議申し立ての方法
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害認定の申請ができます。しかし、後遺障害認定の申請をしても、後遺障害が認定されないケースは珍しくありません。
後遺障害は、認定されるか否か、どの等級で認定されるかによって受け取れる賠償金の額に大きな影響を与えます。認定結果に納得できないときは、異議申し立てで結果を争うことが可能です。
今回は、後遺障害認定の結果に納得できない方に向けて、後遺障害が認定されない理由と認定結果を争う方法などを解説します。
前提となる後遺障害認定の手続きについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
後遺障害が認定されない理由
後遺障害が認定されない理由としては、次のようなものが挙げられます。
- 事故と怪我との因果関係が不明
- 残存する自覚症状や身体的損傷が軽い
- 通院期間や通院日数が少ない
- 自覚症状を裏付けるものがない
- 申請書類が不足している、内容に不備がある
それぞれの理由について詳しく解説します。
事故と怪我との因果関係が不明
後遺障害認定の対象となるのは、交通事故と因果関係のある怪我の後遺症のみです。事故と怪我との因果関係が明確でなければ、後遺障害は認定されません。
事故の状況や車両の損傷状況から事故の衝撃が軽微と考えられる場合には、事故と怪我との因果関係を否定される可能性があります。因果関係を認めてもらうには、事故によって怪我をする程度の衝撃を受けたことを証明する必要があります。
事故の発生から初回の通院までの期間が空いている場合も、因果関係を否定される可能性が高いでしょう。むち打ち症状は、時間が経ってから発生することもあります。しかし、事故からの期間が空いてしまうと、むち打ち症状と事故を結びつけるのが難しくなってしまいます。交通事故に遭った際は、自覚症状がなくても医師の診察を受けておくことが重要です。
残存する自覚症状や身体的損傷が軽い
後遺障害の認定を受けるには、後遺症が等級ごとの認定基準を満たしていなければなりません。そもそも症状固定後に残存する自覚症状や身体的損傷が軽く、等級の認定基準を満たしていないときには、後遺障害は認定されません。
通院期間や通院日数が少ない
通院期間や通院日数が少ない場合には、後遺障害が認定されない可能性があります。
特にむち打ち症などの他覚的所見(第三者が客観的に確認できる所見)に乏しい症状の場合、「症状を治すために長期間しっかりと通院した」という事実がなければ、後遺障害は認定されません。一般に、むち打ち症で後遺障害14級の認定を受けるには、少なくとも半年以上の通院が必要とされています。
自覚症状を裏付けるものがない
他覚的所見に乏しい後遺症については、自覚症状の裏付けがなければ後遺障害は認定されません。
自覚症状を裏付けるものとしては、事故当初から訴えている症状に一貫性があること、自覚症状の表現が具体的であること、通院日数が多いことなどが挙げられます。症状の一貫性や自覚症状の具体性を証明するには、通院当初からのカルテが重要な証拠となります。
申請書類が不足している、内容に不備がある
後遺障害認定の申請では、後遺障害診断書の記載内容が何よりも重要となります。後遺障害診断書の記載内容が不足していたり、内容に不備があったりすると後遺障害が認定される可能性は低くなります。
後遺障害診断書は、後遺障害認定のための特別な診断書です。そのため、医師であっても後遺障害診断書の作成に慣れていない人は少なくありません。適切な後遺障害認定を受けるには、専門的な見地から後遺障害診断書の内容を確認し、必要に応じて医師に修正を依頼したり、追加での証拠書類を添付したりする必要があります。
認定結果を争う3つの方法
後遺障害認定の結果を争うには、次の3つ方法があります。
- 異議申し立て
- 紛争処理制度を利用する
- 訴訟を提起する
それぞれの内容を解説します。
異議申し立て
異議申し立ては、認定結果を争う際に最初に検討すべき方法です。異議申し立てを行うには、後遺障害認定の申請をした自賠責保険会社に異議申立書を送付します。
異議申し立てには回数制限がなく、納得できないのなら何度でも申し立てができます。しかし、当初の認定結果を覆すための証拠を用意できなければ、後遺障害の認定や等級の変更は難しいでしょう。
異議申し立てが認められるには、当初の認定結果を分析したうえで、新たに医師の検査を受けたり、不備のない後遺障害診断書を準備したりする必要があります。
紛争処理制度を利用する
紛争処理制度は、異議申し立ての結果に不服がある場合に1度だけ利用できる制度です。自賠責保険とは独立した機関の一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構が紛争処理制度を主催しています。紛争処理制度では、中立の立場にある調停委員が不服の内容についての審査を行います。
訴訟を提起する
後遺障害の認定結果は、訴訟で争うこともできます。異議申し立てをせずに訴訟提起することも可能です。
訴訟では、後遺障害の認定結果を直接争うのではなく、請求する賠償金額を理由付ける要素として、後遺障害の有無や等級を主張します。
異議申し立ての手続きは弁護士への相談がおすすめ
異議申し立ての手続きは、弁護士に相談すべきです。
異議申し立てを認めてもらうには、非該当や希望する等級とならなかった理由を正確に分析する必要があります。専門的な知識を持つ弁護士であれば、当初の認定結果から何が足りないかを検討したうえで、必要な書類を収集できます。さらに、異議申立書でも、必要な主張を漏らさず適格な主張を行います。
被害者自身が異議申し立てを行ったり、後遺障害診断書の作成経験の少ない医師に相談したりしても、異議申し立てが認められる可能性は低いでしょう。異議申し立てが認められる可能性を高めるには、交通事故事件の実績が豊富な弁護士に相談することを強くおすすめします。